verse-paradox

大阪　イオン屋外駐車場　立体駐車場前

時折、車が通るため車道を挟んで反対側へカメラをセットする。カメラの背後にはJRの郊外線路があり電車が走っている。

んで、ダンスを一緒にやる感じですか。

-そうです。僕もそこに入ってやっていくので。じゃあ、音楽かけてみます。よろしくお願いします。

はい。

-すみません、無茶振りを。

まだ初めて少ししか経っていなくて。

-いつも練習をこの駐車場で？

そうですね。

-近くの公園に向かって歩いていてたまたま通りがかったんですが、すごい人がいるなと。

一応ね、フリースタイルヨーヨーなんです。音楽かけてパフォーマンスする。

-それってどういう音楽なんですか。

あー、j-popとか洋楽もそうですし。1分、1分半、3分。あと４分間アーティスティックパフォーマンスって言って世界観に合わせてやるもの。

-へー、なるほど。

あとはフリースタイルサッカー、ダンスとかと一緒にやるものもあります。

-ジャンルが違う人たちとのバトル？

そうそう。

-すごいな。めっちゃアツいですね。その大会って日本でやってるんですか？

そうですね。去年の出場者もヨーヨーの世界大会優勝者で。

-ヨーヨーって日本発祥でしたっけ。

ええとね、アメリカからきた企業がハイパーヨーヨーってので広めていって、いろんな世界大会があって。そのうちの日本での世界大会でその人は優勝してて。

-へぇ、そんな熱狂的なんですね。

若いんですよ、その人。

-あ、そうなんだ。いくつくらい？

２３とか。

-えー。

突然の轟音。電車が通過する。

スマートフォンとモバイルスピーカーを接続し曲を選ぶ二人。

もう一度、別の電車が通過していく。

まだはじめたてで、そんなにできないですよ。

-いやいやいや。さっきやってたみたいな動きだけですごい。
　何か好きな曲とかありますか？

彼はそばに停めてある自身の車のドアを開け、ポケットに入っていた小物を置く。

再び轟音。電車が通過。

ほんとに、30秒くらいしか続かないですよ。

-一緒にこう、時間を過ごすみたいな感じのものなので。

二人の背後の5階建ての立体駐車場からピアノのBGMが流れる。それぞれのフロアに反響した音が響く。

ちょっと仕事があるので10分ぐらいです。もうちょいしたら仕事行かないといけなくて。

-あ、そうなんですね。

あそこにカメラ置いてると、その前を車通っていくし。どうします？今は横向きで撮っているけれど、縦向きにします？

-そうですね、縦向きに撮りましょうか。

二人は地面に置いているバックなどの荷物がカメラに映りこむと考え、移動させる。

カメラを移動させるために道を横切ろうと走り出して、すぐ足を止める。
車が通りかかる。
自分が待っていることをジェスチャーで伝え、車を先に通して道を渡る。

カメラを移動させる。

このバックパック使います？

彼が自身の緑色の生地のバックパックをカメラの土台がわりに渡す。

-あ、ありがとうございます。少し離れてみて、今立ってくれているあたりで全身が映るくらいで撮影しようと思います。あ、ばっちりです。

僕はこの辺で何かやってたらいいですか？

-はい、もう自由に。お願いします。

双方が相手に向かって軽く礼をする。
スピーカーから音楽を流し始める。
Maroon 5 「Moves like jaguar」

あ、この曲知ってる。

彼はもう一度、先ほどより深く礼をする。

彼はヨーヨーの糸が全て出きってしまうとそれを地面に置き、すぐさまポケットから別のヨーヨーを取り出す。
片手、両手と複数のヨーヨーを持ち、頭の上で大きく円を描くようにも振るう。

スピーカーの位置を移動させる。

ダンスの動きの中で走る、歩くを織り混ぜ場所を移動する。

彼はヨーヨーを両手に持ちながら、ステップを踏む。

音楽が終わる。

-えい、やぁ、ありがとうございます。

ヒューマンビートボックスぐらいしかできないです。ビートボックスならできる。

-えぇ、そうなんですか。マルチなんですね。

そうですね、この-

鉄同士が接触する轟音。列車の通過。

昔やってたんですよ。ヒューマンビートボックス。

-マイクを無しで？

その時はマイクありで。

-あれってやっぱマイクないと？

そうですね、やっぱマイクの音拾ってってやつなので。あ、仕事行かないと。

-あ、そうですね。この後-

再び轟音。列車の通過。

めっちゃミスりましたわ。ヨーヨーを使ったパフォーマーの一人がダンスパフォーマンスを掛け合わせてやってましたよ。めっちゃよかったです。

-へぇ、足の下をヨーヨーでくぐらせたり。

そうそうそう。仕事行きますわ。

-ありがとうございます。

すいませんでした。握手できないけれど。

-そうですね

申し訳ない。

-撮った動画を送りたいでの、もしよかったら連絡先とかを。

あー、今日ね、ちょっとね自分では納得できないので、いいですわ。

カメラの録画を止める。

-あぁ、そうですか。

はい

彼はバックパックを持つと自身の車に乗り込みエンジンをかけ走り始める。
窓を開けてこちらに挨拶をする。

ありがとうございました。

-ありがとうございました！あの、映像を使ってもいいでしょうか？

はい、適当にしといてください。

走り去っていく車。