大阪 郊外都市の私電駅近く 21時15分
花壇を這っているおばあさんに出くわす。
こわい。本気で思った。そうだ、道は得体の知れないものに出くわす場所なんだった。
セッションを始めてから、自分が日常生活からささやかにはみ出した存在になることで、今ではすっかり自分がそっち側にいると思っていたのだが。今、目の前で緑化樹木の植えられた土の上を這い、猫のような声をあげる老婆を目の前にして、僕は一気に恐怖を覚える者になった。
そして咄嗟に彼女に何か声をかけるべきか悩む。それはセッションの声かけではなく、ケア的な姿勢としての声かけだった。僕は彼女をどうにかしてあげられるだろうかと。しかし、老婆のあまりに奔放な姿勢の前を前にして僕は声を発すことなどできるはずがなかった。
この場所は、マンションやアパートが建ち並ぶ住宅街が隣接した駅のすぐ近くにある。公共スペース緑化用の花壇を背にベンチが置かれていた。駅が目の前ということもあり、大阪の中心地から、または府外からの電車が停車する度に人の往来がある。皆、駅から出ると足早に帰路へと就き去って行く。
しばらくしてもう一度通りかかると、老婆は駅へと移動しており駅員さんに付き添われてゆっくりと駅から追い出されている。更にしばらく経った後、そろそろ家に帰ろうかと駅の改札に向かうと、担架と警察官5人、駅員、白衣を着た男女(おそらく病院の看護師)が集まっている。その中に老婆もいた。やんわりした口調で警察官があっちが涼しいから行こうか、と声をかける。
その光景を離れた場所から見て思わず立ちすくむ。
彼女にとって何か力になれることはないかと思ったが、そうだ、僕の力ではどうにもならないことがあるんだと思い知った。他者に対して善意を持つこと。それが機能しないこと。
あるいはそれが暴力にすらなること。
この突然現れた領域では言葉を介したコミュニケーションが不可能になる。
そして、それはただ、それくらいのことでしかない。
僕は帰宅するために、老婆のそばをそっと通り抜け改札に入った。電車は時刻通りに来る。
電車内にはいつものように疲れた顔の幽霊のような大人たち。自分もそこへ仲間入りして車窓を眺めた。
生年月日:1995年7月25日
住所:京都府上京区泰童片原町652−4
職業形態:パートタイム
不定期の活動:ダンス分野を中心とする舞台活動
配偶者:なし
身長:175cm
体重:60kg
血液型:AB
処方されている薬:ドグマチール、抑肝散加陳皮半夏、レキソタン、デュタステリド、ミノキシジル
不足項目:亜鉛、EPA、DHA
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