「旅のはじまり」
2022年、年が明けて暦上は春の気配が立ちはじめる頃、黒田健太から「企画に参加してほしい」という一言と、企画書が送られてきた。
何をするの?と聞くと、
「本をつくる」
とのことである。
誤解を恐れずに言うと、当初はちょっと意味が解らなかった。パフォーマンス・舞台作品ではなくて、なぜ「本」なのだろうか。
しかし、送られてきた企画書を読むと、自身が行ってきたことをきちんと立ち止まって考えたい、という強い意思と、「本」をつくることへの気合いを感じたので、協力することにした。まぁ単純に、黒田がつくる「本」がどういうものかに興味があったというのもある。
企画書には、「ストリート」上で起こることに対する独自の分析と、彼が実践してきた「セッション」をベースにしたリサーチのアイデアが書かれていた。プロジェクトの進行に合わせて内容が変わっていったので詳細は割愛するが、大筋としては以下のとおりである。
① 自身の活動(「セッション」という取組み)を再考するためのリサーチを行う
② ①の実施を通して自身の活動の言語化を試みる
③ ストリートで実践してきた取組みを「本」という形式でまとめる
④ 「本」を制作するプロセスそのものを共有し、社会(日常生活)とパフォーマンス行為の間に発生する様々な”まなざし”について考える
はじめのミーティング時に、なぜアウトプット形式が「本」なのか、そしてその「本」の中身はどんなものなのかを問うたが、その時点では彼のイメージも具体的なものではなかった。でもなぜか、「本」でないといけないらしい。それだけはわかった。
その後、リサーチや議論を重ねる中で、お互いにアイデアを投げ合い、イメージを膨らませ、徐々に理解していくことになる。
その過程については、次回以降に続く。
筆:協働リサーチャー 國米 翼
音楽家 / 美術家 / ディレクター / 鑑賞方法に関する研究
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